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宿屋の雑学

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旅行業界

旅行業は、比較的参入が容易な業種なので、異業種からの参入も非常に多く、およそ1万社以上の業者がいますが、業界の構図はJTBを頂点とする一種のピラミッド型になっています。ついで近畿日本ツーリスト、日本旅行と続き、東急観光が第4位でしたが、メディア販売で急成長の阪急交通社に抜かれました。上場企業は、近畿日本ツーリストと東急観光と少なく、HISが店頭登録されているのみです。業界トップのJTBの未上場に対しては、批判的な意見もあります。


旅行業界は一見、電通・博報堂があり、中堅・中小が続き、その他多数の広告代理店がある広告業界に似ています。そのピラミッド構造の他に、何種類かの「系列」に分かれます。

  旧国鉄系・・・JTB、日本旅行
  私鉄系・・・近畿日本ツーリスト、東急観光、阪急交通社、名鉄観光サービス、西鉄旅行、東武トラベル、南海国際旅行、等々
  物流系・・・日通旅行、日新航空サービス、等々
  農業系・・・農協観光
  JR系・・・JR東海ツァーズ、JR各社の旅行部門
  新聞系・・・読売旅行、朝日旅行会、日経旅行
  流通系・・・パシフィックツァーシステム、ゼロファースト、等々
  航空系・・・ジャパンツァーシステム、全日空トラベル、等々
  独立系・・・HIS、マップインターナショナル、ビッグホリデー、ジャパンアメニティートラベル、タビックスジャパン等々
  大手旅行社系・・・JTBトラベランド、ツーリストサービス、日旅サービス、JTBサン&サン、JTBゆうゆう旅行
  ハウスエージェント・・・日立トラベルビューロー、東芝ツーリスト、NECツーリスト、郵船トラベル、等々

ハウスエージェントとは、企業が独自に自社社員の為に設立した旅行社ですが、広く一般の旅行者に門戸を開放しているところも多いようです。


旅行業の始まりは、およそ160年前イギリスのトーマス・クックが企画した、禁酒運動の集会への鉄道利用団体旅行が契機と言われています。その大成功を受けてあちこちから斡旋を頼まれるようになり、嗣子のジョンとともに旅行業に専念し、トーマスクックの名前は観光旅行の代名詞にまでなりました。アメリカでは、クレジットカード会社として有名なアメリカンエキスプレスが、トラベラーズチェックを発行する事によって、1891年に旅行業者としての地位を確立しました。今では金融・保険業務の比重の方が高いようです。


日本の旅行業の始めは、1905(明治38年)滋賀県草津駅前で食堂を経営していた南進助が、高野山参詣団や伊勢神宮参拝団などの団体旅行の斡旋を始めた事から始まります。これが業界3位の日本旅行のルーツです。旧国鉄、それもJR西日本との関係が深く、近年、JR西日本の旅行部門Tisと合併しましたが、近畿日本ツーリストとの合併は、企業の社風の違いや財政状況、経営方針や人事等での事情から実りませんでした。国内ブランドの「赤い風船」は、同名曲が以前ヒットしたこともあり、社名よりも有名かもしれません。


JTBは、1912年(大正1年)設立のジャパン・トラベル・ビューローが外国人VIPの旅の世話を手掛けたのが始めです。社名も東亜旅行社、東亜交通公社と変わり、戦後、財団法人日本交通公社として再スタートしました。1963年には公益部門は財団として残し、営利部門は株式会社化され、その後CIを実施してJTBを商号とし、今日に至っています。JRの民営化に伴い、JR定期券の取扱の中止や主要駅の旅行センターからの立ち退き、JTBしか発行していなかった時刻表の発行をJRも始めるなど、かなりの軋轢がJR側とありましたが、創業以来、一度も首位を明渡した事がありません。


JTBと日本旅行は旧国鉄系で、国鉄券の代売を許可されていましたが、大手旅行会社の中では近畿日本ツーリストと東急観光は、私鉄系の為か、国鉄券の代売が出来ませんでした。そこで団体客を中心とした営業に力を入れ、特に修学旅行では、近畿日本ツーリストは圧倒的な力を発揮しました。旅行商品でもアイデアを駆使した企画を販売し、80年代初めには業界2位の日本旅行を抜き去りました。昨今ではメディア販売に力を入れ、クラブツーリズムの通販雑誌「旅の友」によるツァー販売が、業界の耳目を集めています


旅行業界の特徴のひとつに、収益性の低さがあります。売上高が兆の単位であっても純益は数十億。利益率0.数%しかありません。労働集約型産業の上に、メインストリートへの多店舗展開、予約システムを中心とする膨大な金額の情報システム投資などが欠かせないからです。また格安航空券の流通や価格競争、企画商品のサービス合戦、更にはテロ等の社会的事件・天災・景気の変動の影響を受けやすく、需要が不安定な面もあります。


旅行業界は、その収益性の低さを補うため、旅行保険を勧め、旅行地においてレストランや土産物店、レンタカー店、スキースクール、ダイビングスクール等とタイアップし、各種オプショナルツァーを販売しています。海外等へのパックツァーの利益率は10%程度といわれ、目玉商品に至っては5%の商品も珍しくないようです。


収益性の低い格安ツァーに対して、法人営業は高収益の基本となっています。その中でも、学校の修学旅行は毎年行われる大口団体で、昨今のデフレ基調の中では宿泊料金も相対的に高目と言えます。また宗教法人の信者の旅行・議員や特殊法人の視察旅行、更にプロスポーツ選手の団体旅行などは余り予算を気にしないケースが多いらしく、美味しいマーケットと言われます。


旅行業は、昔は旅行斡旋業と言われていました。その後、1971年の業法改正で旅行業と名称が変わり、斡旋による手数料商売から旅行商品の企画・販売業へ変わっていきました。オーダーメイドの手配旅行からレディーメイドの主催旅行(いわゆるパックツァー)へ主力商品も変わっていったのですが、その旅行形態によって大きくその実態が異なりますので注意が必要です。


手旅行社は、社内システムのデータによって評判の良い宿を勧めることは出来ますが、その宿の中身を全て知っているわけではありませんので、勧められた宿が必ずしも旅行者の趣味や好みに合うかどうかは判りません。旅行社のカウンターにいる若い社員の方は、宿泊施設を見学する機会が少なく、旅行社によっては人事政策上、宿泊施設側が招待する現地視察研修を敬遠するところさえあります。


街中の小さな旅行社の中には、実は大変な勉強家で「旅行のプロ」と呼びたい方がいたりします。そういう方は実際にご自分で各地へ出向き、下見をしたり施設側とよく話しをしたりしていますので、お客様に向く施設を紹介出来るだけでなく、地域の文化にも大変造詣が深く、地元ならではの情報もご存知だったりします。残念ながら大手旅行社では、そういった本当の「旅行のプロ」はリストラや人事異動等で極端に少なくなりました。


個人経営の旅行社は、主に団体客を中心に営業してきました。しかし個人旅行(例えば、団体の幹事さんから依頼された夏休みの家族旅行)の手配が出来ないと、団体獲得に悪影響が出ますし、またいちいち電話で一軒一軒空室確認をしなくてはなりません。そこで、簡単に予約の取れる大手旅行社のコンピューターシステムを導入するところが多くなりました。提携販売店になれば、同時に大手旅行社の旅行商品も扱えるので、手配しか出来なかった個人経営の旅行社にとっては、品揃えが飛躍的に増える事になります。また、大手旅行社の看板を出せるので店の信用度も向上します。大手旅行社にとっては、提携販売店が増えると自社の売上アップに大きく寄与しますので、提携販売店を増やす為の専門セクションもあるほどです。ちなみにJTBでは、自社の売上は全売上の半分以下しかありません。


今まで旅行社の販売経路は、店舗・営業マンによるセールス、あとは電話予約センターくらいでした。しかし最近では、新聞紙面や組織化した会員への旅行雑誌を使った通信販売、インターネットでの予約サイト・コンビニ店頭での予約専用端末の設置、そして特定企業や企業グループなどのクローズドマーケット限定の料金や商品の投入等、多岐に渡ってきました。(2002.5.5)

(by aruji)

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高尾憲資 aruji@monya.co.jp


コラム「宿屋の雑学」


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